2024年の投稿[3306件](33ページ目)
リュウ
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みなつむSS だれかの日記
―月―日
今日はアイドリッシュセブンの晴れ舞台!ライブの日の彼らは何度観ても、どこから見ても、むしろ見る度にどんどんすごくなる!私の自慢のアイドル。私の自慢の虹!
うーん、もっと演出勉強して、今日よりもみんなを輝かせたいな。
そういえば今日は皆さんを招待してたんだ。彼にも……今日の感想、聞いてみようかな。
―月―日
最近、ちょっと忙しい。空き時間に勉強してるからかも。スキマ時間以外はずっと仕事。
あ、そういえば……連絡、返したっけ?返してないかも……今からラビチャ返そう。怒ってない……よね?
―月―日
しばらく日記書くのも忘れてた。
疲れたなあ。
会いたいな。
―月―日
今日、久々に彼に会った!お仕事だったのに、帰りに家に寄ってくれた。
夕ご飯を一緒に食べた。今日の煮物はお口にあったみたい。彼の好物はメモしてるから、追加しておこうかな。
―月―日
あー。生理近づくと、こう……アレだね、アレ……むらっとするというか……。
日記だとなんでも書いちゃうな。
最近、彼とそういうことないな。私も彼も忙しくてそもそも会えてないしね。
一日中ずっとそういうことする日とか、欲しい……なんて、彼には内緒ね。
―月―日
体調が悪い。
経血が多い。
女ってめんどくさいなぁ……。
今日のお仕事は万理さんに代わってもらった。申し訳ないよお……。
―月―日
生理痛で寝込んでて、ふと起きたら彼がベッドにいた。びっくりした。痛み止めとお腹をあっためるものを持ってきてくれてた。
日記だから書いちゃうけど、見た目があんなにすごいかっこいいのにこんな風に気遣いも出来ちゃったり、ほんとに……私にはもったいないくらいの……でも自慢の彼!
気を使ってささっと帰ってくれた。でも……キスくらい、して欲しかったな、なーんて……。
―月―日
彼と喧嘩した。もちろん、私たちの関係性は……うん。日記にも書けない、けど。
確かに覚悟はしてた。でも、たまーに……。
街中で腕を組んでるカップルとかが、他の人の目も気にせずに「あれほし〜買ってよ〜」とか言ってるのとか……高校生カップルが手繋いで渋谷歩いてたり……カフェでデートしてる人達とか……。
あ、プレゼントが欲しいってことじゃない!違う、そうじゃなくって。
……仲直り、するべきだよね。
私が悪かったんだ。
―月―日
もう、私たち、ダメなのかなー……
……こんな仕事じゃ、恋愛なんかろくにできないか。
いや、でもまあ、彼がそもそも普通の人でもないから……。
……日記ですら色々と書けないのが、少し心苦しい。
―月―日
びっくりした。今日、家に帰ってきたらいつの間にか鞄にラッピングされたものが入ってて、慌てて開けたら手紙がついてた。彼からだった。
この前は私も言いすぎました。これからも私と一緒にいてくれませんか、だって。苦労はかけるかもしれませんが、貴方と一緒にいたい気持ちは同じなんです、信じられないかもしれないけれど……だって。
信じられないわけない!私だって、アイドルのマネージャーやってるから、アイドルの彼らをずっと見てるから。彼のやりたいこととか、夢とか、そういうもの、理解できないわけじゃないから。ただ、ちょっと……寂しくなっちゃった、だけだったから……。
あーあ。彼はこんなにも考えて考えて、向こうから行動も起こしてくれたのに、私といえば子供っぽいわがままばっかで困らせて……。
……プレゼント、嬉しいな。……ストールだ。……お仕事でしれっと、使っちゃっても……いいよね?
あー。誰かに自慢、したいよう……彼から貰った、って言いたいよう……。
お返し、何がいいかな。
―月―日
あの喧嘩のあとから、私に気を使ってくれてるんだと思うけど、空いてる時間に通話のお誘いが来るようになった。会うのは難しいけど、喋るのなら時間が作りやすいからって、そうやって考えてくれていたことが嬉しい。
ほんとは会いたい!もう、いまも会いたくて……ぎゅって……してほしい。……また長いこと会えてない。彼の匂いを忘れてしまいそうで、怖い。力いっぱい抱きしめてくれる時、力強くて痛いくらいなのも、忘れたくない……。
でも、声が聞けるだけでも……とっても嬉しい。さっきもちょっとだけ喋った。えへへ、いま、しあわせ。
―月―日
誕生日のお祝いをさせてくださいって言われた。覚えててくれたんだ……せっかく会っていたのに嬉しすぎて、私変な顔してなかったかな?
お店どこがいいですかって言われて、思いつくお店あげてみたけど少しだけ困った顔をされただけだった。まあ、そりゃ、やっぱ私たちじゃ、こう……年相応のカップルが行くようなミーハーなとこはダメだよね……。むしろ彼が広告になってるくらいだもんね……(これって、ギリセーフかな……日記にどこまで書いていいかいつも悩むなあ)
サプライズじゃなくてすみません、って言われたけど、むしろ楽しみができて仕事に張合いが出たって言ったら笑われちゃった。貴方は仕事ばっかり、だって。
よーし!楽しみもできたし、二週間休み無しフル活動だけど、アイドリッシュセブンのために頑張るぞ!
―月―日
体調が悪い。
疲れが溜まってるのかな。
気付いたら寝てて、彼からのラビチャ、不在ばっかり……ごめんなさい……。
―月―日
あと三日で休み。
あと三日で休み。
―月―日
ーーーー(ぐちゃぐちゃとした線がまばらに描かれているが、意図も文字も読めない)
―月―日
……もう、生きていたくない……。
みんなに、申し訳が立たない……。
週刊誌の表紙やインターネットを見るのが、怖い。
―月―日
部屋でぼーっとしてたら、いつの間にか彼がいた。お父さんが案内してきてくれたんだって言ってた。顔が合わせられなかったのに、涙止まんなくて、私が泣き止むまで抱きしめててくれた。
貴方のせいじゃありませんからねって何回も言われたけど、言われるたびに苦しくなった。
一番恐れていたことになった。
私は彼の人生を壊した……もう、何しても償いきれないよ……。
―月―日
彼、今日も来た。会いたくない、って言ってドア越しに追い返しちゃった。なんか……悲しそうだった気がする……ごめんなさい……。
会いたいよ。ぎゅってしてほしいよ。不安だよ。でも……。
……お別れ、しないと。そんでもって、広まってるスキャンダルは事実無根ってことでなんとかしないと……。
……私たち、付き合っていたことすら嘘にしなきゃいけないんだ。
彼と付き合うまでは、当然だって思ってた。有名人の熱愛発覚って、結構ショックだったし。でも、いまは……。
彼も、私も、ただひとりの人間としてお互いを好きになっただけなのに、どうしてこんなに知らない人達にやんや言われないといけないんだろう。
彼の精神が心配。でも私に出来るのは、謹慎くらい……。
―月―日
一ヶ月も引きこもってたから、現場復帰初日の今日、ガチガチに緊張しちゃった。
あっちこっちでひそひそ言われてるの聞こえてた。また彼に迷惑かけちゃったな。アイドリッシュセブンのみんなもなんかこう、腫れ物触るみたいだったし……申し訳ない……。
ずっとラビチャも無視してたから、今日彼のユニットメンバーづてに伝言を預かった。結局私の誕生日を祝えなかったから、祝わせて欲しい、いつなら空いているか、だって。こんな形で皆さんにバレるの、最悪だったな……。
……最後に。本当に最後に、会いたいって思っちゃってる自分がいる。これって……甘えても、いいのかな……。
お別れのプレゼント、用意しておこう。
―月―日
明日、彼との食事の日。
楽しみなのに、これが最後だと思うと苦しいな。変な汗ばっか出るし。色々思い出して、きついな〜……。
別れましょうって、ちゃんと言えるかな。練習していこう。
泣かないようにしなくちゃね。
―月―日
別れを切り出したら、なんか、結婚する話になってた。
……?
今日は、寝よう……久しぶりに彼と抱き合ったりしたし、頭が働いてないのかも……。今日の彼、なんか……優しかったな……。
―月―日
だんだん落ち着いてきたら冷静になってきた……けど、え!?ってなった。私、プロポーズされたってこと……?
彼に本気だったのか改めて通話で聞いてしまった。何馬鹿なこと言ってるんですかって一蹴されちゃったけど。
でも確かに、彼が言うように、結婚報道を間近に控えていました、バレちゃいましたけど、っていうのは鎮火にはいいのかも……?
……。
私、なんかうまく言いくるめられてたり、する?
―月―日
あれ、なんか……一緒に住む家の話とか決まってる……。
―月―日
引越しの日取りが決まってた。
彼が家に来て、判子あります?って聞かれたからここにありますよ〜って言ってたら、なんか婚姻届完成してた……んだよね。
明日出しに行きましょうね、って言われた。珍しく二人ともオフなので、そのままちょっとデートしましょう、だって。
うーん……?
―月―日
名字が変わった。
棗紡。
二文字になったなぁ、って思った。
デートでいっぱい手繋いでくれて、エスコートしてくれて、嬉しかったな。
もう隠す必要ないですからね、少しくらいなら見せつけてやっていいんですよ、って言われて。嬉しかったなぁ。
これからはもう少し、二人でお外に行けたりするんだろうか。
―月―日
結婚報道の日だった。ずっと怖くてヒヤヒヤしてたけど、ナギさんが彼なら大丈夫ですよって、一緒に会見を見守ってくれた。
ネットでは賛否両論。でも結婚間近で用意してて、実際にもう結婚してます、っていうのがなんか、よかったらしい?
本当のファンならそのうち戻ってきますよ、って彼は笑ってた。芸能人ってやっぱりタフだなって思った。
―月―日
一緒に暮らし始めた。彼……ってもう書かなくていいのか、付き合ってるっていうか結婚してるの報道されたから……巳波さんはびっくりするほど物が少ない!だから私の物で部屋がいっぱいになっちゃったけど、そのままでいいですよって言われた。
結婚式してないから結婚の実感はなかったけど、巳波さんに一日「お嫁さん」だの「妻」だの「奥さん」だの呼ばれてるうちに、なんか……ああ、結婚したんだなぁって思った。
でもいつか……ウエディングドレス、着たいなぁ。
―月―日
家族親戚とお世話になっている関係者の方々をお招きして結婚式をした。
巳波さんは本当に綺麗で……惚れ惚れしちゃった。ウエディング雑誌の表紙の撮影みたいだなって思ってたのに、私に誓いの言葉言うし、私にキスするし、現実なんだなぁって思った。
お父さん、めちゃくちゃ泣いてて面白かったな。皆さんが用意してくれたプレゼントや余興もすごく嬉しかった。
今日、一生忘れられない日になりそう。
―月―日
幸せだなあ。
―月―日
ここを区切りに、日記の存在を忘れてしまったのか、書く必要がなくなったのかは知らないが、途切れている。たまたま見つけてしまっただけなのだが……読んでしまった。
また紡さんが日記を書こうとした時にびっくりさせてみたいので、ここには今日の私の日記を書いておく。彼女、どんな顔を見せてくれるだろうか。
ねえ、紡さん。私も今、幸せですよ。
一生離さない。
次に私か貴方のどちらかがこの日記を思い出し、中を開く時にも、私たちは一緒に幸せでいましょうね。
畳む 72日前(金 00:48:50) SS
―月―日
今日はアイドリッシュセブンの晴れ舞台!ライブの日の彼らは何度観ても、どこから見ても、むしろ見る度にどんどんすごくなる!私の自慢のアイドル。私の自慢の虹!
うーん、もっと演出勉強して、今日よりもみんなを輝かせたいな。
そういえば今日は皆さんを招待してたんだ。彼にも……今日の感想、聞いてみようかな。
―月―日
最近、ちょっと忙しい。空き時間に勉強してるからかも。スキマ時間以外はずっと仕事。
あ、そういえば……連絡、返したっけ?返してないかも……今からラビチャ返そう。怒ってない……よね?
―月―日
しばらく日記書くのも忘れてた。
疲れたなあ。
会いたいな。
―月―日
今日、久々に彼に会った!お仕事だったのに、帰りに家に寄ってくれた。
夕ご飯を一緒に食べた。今日の煮物はお口にあったみたい。彼の好物はメモしてるから、追加しておこうかな。
―月―日
あー。生理近づくと、こう……アレだね、アレ……むらっとするというか……。
日記だとなんでも書いちゃうな。
最近、彼とそういうことないな。私も彼も忙しくてそもそも会えてないしね。
一日中ずっとそういうことする日とか、欲しい……なんて、彼には内緒ね。
―月―日
体調が悪い。
経血が多い。
女ってめんどくさいなぁ……。
今日のお仕事は万理さんに代わってもらった。申し訳ないよお……。
―月―日
生理痛で寝込んでて、ふと起きたら彼がベッドにいた。びっくりした。痛み止めとお腹をあっためるものを持ってきてくれてた。
日記だから書いちゃうけど、見た目があんなにすごいかっこいいのにこんな風に気遣いも出来ちゃったり、ほんとに……私にはもったいないくらいの……でも自慢の彼!
気を使ってささっと帰ってくれた。でも……キスくらい、して欲しかったな、なーんて……。
―月―日
彼と喧嘩した。もちろん、私たちの関係性は……うん。日記にも書けない、けど。
確かに覚悟はしてた。でも、たまーに……。
街中で腕を組んでるカップルとかが、他の人の目も気にせずに「あれほし〜買ってよ〜」とか言ってるのとか……高校生カップルが手繋いで渋谷歩いてたり……カフェでデートしてる人達とか……。
あ、プレゼントが欲しいってことじゃない!違う、そうじゃなくって。
……仲直り、するべきだよね。
私が悪かったんだ。
―月―日
もう、私たち、ダメなのかなー……
……こんな仕事じゃ、恋愛なんかろくにできないか。
いや、でもまあ、彼がそもそも普通の人でもないから……。
……日記ですら色々と書けないのが、少し心苦しい。
―月―日
びっくりした。今日、家に帰ってきたらいつの間にか鞄にラッピングされたものが入ってて、慌てて開けたら手紙がついてた。彼からだった。
この前は私も言いすぎました。これからも私と一緒にいてくれませんか、だって。苦労はかけるかもしれませんが、貴方と一緒にいたい気持ちは同じなんです、信じられないかもしれないけれど……だって。
信じられないわけない!私だって、アイドルのマネージャーやってるから、アイドルの彼らをずっと見てるから。彼のやりたいこととか、夢とか、そういうもの、理解できないわけじゃないから。ただ、ちょっと……寂しくなっちゃった、だけだったから……。
あーあ。彼はこんなにも考えて考えて、向こうから行動も起こしてくれたのに、私といえば子供っぽいわがままばっかで困らせて……。
……プレゼント、嬉しいな。……ストールだ。……お仕事でしれっと、使っちゃっても……いいよね?
あー。誰かに自慢、したいよう……彼から貰った、って言いたいよう……。
お返し、何がいいかな。
―月―日
あの喧嘩のあとから、私に気を使ってくれてるんだと思うけど、空いてる時間に通話のお誘いが来るようになった。会うのは難しいけど、喋るのなら時間が作りやすいからって、そうやって考えてくれていたことが嬉しい。
ほんとは会いたい!もう、いまも会いたくて……ぎゅって……してほしい。……また長いこと会えてない。彼の匂いを忘れてしまいそうで、怖い。力いっぱい抱きしめてくれる時、力強くて痛いくらいなのも、忘れたくない……。
でも、声が聞けるだけでも……とっても嬉しい。さっきもちょっとだけ喋った。えへへ、いま、しあわせ。
―月―日
誕生日のお祝いをさせてくださいって言われた。覚えててくれたんだ……せっかく会っていたのに嬉しすぎて、私変な顔してなかったかな?
お店どこがいいですかって言われて、思いつくお店あげてみたけど少しだけ困った顔をされただけだった。まあ、そりゃ、やっぱ私たちじゃ、こう……年相応のカップルが行くようなミーハーなとこはダメだよね……。むしろ彼が広告になってるくらいだもんね……(これって、ギリセーフかな……日記にどこまで書いていいかいつも悩むなあ)
サプライズじゃなくてすみません、って言われたけど、むしろ楽しみができて仕事に張合いが出たって言ったら笑われちゃった。貴方は仕事ばっかり、だって。
よーし!楽しみもできたし、二週間休み無しフル活動だけど、アイドリッシュセブンのために頑張るぞ!
―月―日
体調が悪い。
疲れが溜まってるのかな。
気付いたら寝てて、彼からのラビチャ、不在ばっかり……ごめんなさい……。
―月―日
あと三日で休み。
あと三日で休み。
―月―日
ーーーー(ぐちゃぐちゃとした線がまばらに描かれているが、意図も文字も読めない)
―月―日
……もう、生きていたくない……。
みんなに、申し訳が立たない……。
週刊誌の表紙やインターネットを見るのが、怖い。
―月―日
部屋でぼーっとしてたら、いつの間にか彼がいた。お父さんが案内してきてくれたんだって言ってた。顔が合わせられなかったのに、涙止まんなくて、私が泣き止むまで抱きしめててくれた。
貴方のせいじゃありませんからねって何回も言われたけど、言われるたびに苦しくなった。
一番恐れていたことになった。
私は彼の人生を壊した……もう、何しても償いきれないよ……。
―月―日
彼、今日も来た。会いたくない、って言ってドア越しに追い返しちゃった。なんか……悲しそうだった気がする……ごめんなさい……。
会いたいよ。ぎゅってしてほしいよ。不安だよ。でも……。
……お別れ、しないと。そんでもって、広まってるスキャンダルは事実無根ってことでなんとかしないと……。
……私たち、付き合っていたことすら嘘にしなきゃいけないんだ。
彼と付き合うまでは、当然だって思ってた。有名人の熱愛発覚って、結構ショックだったし。でも、いまは……。
彼も、私も、ただひとりの人間としてお互いを好きになっただけなのに、どうしてこんなに知らない人達にやんや言われないといけないんだろう。
彼の精神が心配。でも私に出来るのは、謹慎くらい……。
―月―日
一ヶ月も引きこもってたから、現場復帰初日の今日、ガチガチに緊張しちゃった。
あっちこっちでひそひそ言われてるの聞こえてた。また彼に迷惑かけちゃったな。アイドリッシュセブンのみんなもなんかこう、腫れ物触るみたいだったし……申し訳ない……。
ずっとラビチャも無視してたから、今日彼のユニットメンバーづてに伝言を預かった。結局私の誕生日を祝えなかったから、祝わせて欲しい、いつなら空いているか、だって。こんな形で皆さんにバレるの、最悪だったな……。
……最後に。本当に最後に、会いたいって思っちゃってる自分がいる。これって……甘えても、いいのかな……。
お別れのプレゼント、用意しておこう。
―月―日
明日、彼との食事の日。
楽しみなのに、これが最後だと思うと苦しいな。変な汗ばっか出るし。色々思い出して、きついな〜……。
別れましょうって、ちゃんと言えるかな。練習していこう。
泣かないようにしなくちゃね。
―月―日
別れを切り出したら、なんか、結婚する話になってた。
……?
今日は、寝よう……久しぶりに彼と抱き合ったりしたし、頭が働いてないのかも……。今日の彼、なんか……優しかったな……。
―月―日
だんだん落ち着いてきたら冷静になってきた……けど、え!?ってなった。私、プロポーズされたってこと……?
彼に本気だったのか改めて通話で聞いてしまった。何馬鹿なこと言ってるんですかって一蹴されちゃったけど。
でも確かに、彼が言うように、結婚報道を間近に控えていました、バレちゃいましたけど、っていうのは鎮火にはいいのかも……?
……。
私、なんかうまく言いくるめられてたり、する?
―月―日
あれ、なんか……一緒に住む家の話とか決まってる……。
―月―日
引越しの日取りが決まってた。
彼が家に来て、判子あります?って聞かれたからここにありますよ〜って言ってたら、なんか婚姻届完成してた……んだよね。
明日出しに行きましょうね、って言われた。珍しく二人ともオフなので、そのままちょっとデートしましょう、だって。
うーん……?
―月―日
名字が変わった。
棗紡。
二文字になったなぁ、って思った。
デートでいっぱい手繋いでくれて、エスコートしてくれて、嬉しかったな。
もう隠す必要ないですからね、少しくらいなら見せつけてやっていいんですよ、って言われて。嬉しかったなぁ。
これからはもう少し、二人でお外に行けたりするんだろうか。
―月―日
結婚報道の日だった。ずっと怖くてヒヤヒヤしてたけど、ナギさんが彼なら大丈夫ですよって、一緒に会見を見守ってくれた。
ネットでは賛否両論。でも結婚間近で用意してて、実際にもう結婚してます、っていうのがなんか、よかったらしい?
本当のファンならそのうち戻ってきますよ、って彼は笑ってた。芸能人ってやっぱりタフだなって思った。
―月―日
一緒に暮らし始めた。彼……ってもう書かなくていいのか、付き合ってるっていうか結婚してるの報道されたから……巳波さんはびっくりするほど物が少ない!だから私の物で部屋がいっぱいになっちゃったけど、そのままでいいですよって言われた。
結婚式してないから結婚の実感はなかったけど、巳波さんに一日「お嫁さん」だの「妻」だの「奥さん」だの呼ばれてるうちに、なんか……ああ、結婚したんだなぁって思った。
でもいつか……ウエディングドレス、着たいなぁ。
―月―日
家族親戚とお世話になっている関係者の方々をお招きして結婚式をした。
巳波さんは本当に綺麗で……惚れ惚れしちゃった。ウエディング雑誌の表紙の撮影みたいだなって思ってたのに、私に誓いの言葉言うし、私にキスするし、現実なんだなぁって思った。
お父さん、めちゃくちゃ泣いてて面白かったな。皆さんが用意してくれたプレゼントや余興もすごく嬉しかった。
今日、一生忘れられない日になりそう。
―月―日
幸せだなあ。
―月―日
ここを区切りに、日記の存在を忘れてしまったのか、書く必要がなくなったのかは知らないが、途切れている。たまたま見つけてしまっただけなのだが……読んでしまった。
また紡さんが日記を書こうとした時にびっくりさせてみたいので、ここには今日の私の日記を書いておく。彼女、どんな顔を見せてくれるだろうか。
ねえ、紡さん。私も今、幸せですよ。
一生離さない。
次に私か貴方のどちらかがこの日記を思い出し、中を開く時にも、私たちは一緒に幸せでいましょうね。
畳む 72日前(金 00:48:50) SS
リュウ
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みなつむSS R18 欲望
金さえ出せば、世の中とんでもない物が手に入ったりするものだ。手に入った錠剤を見た時には懐疑的だったが、こっそり溶かした水を彼女が飲んで一時間、その説明の全てが嘘ではなかったことに驚いた。
「なつめ、さん」
荒くなっていく息と、熱を帯びていく体。濡れた瞳が、私をじっと見据えて、欲情していた。
眠ればすべて、その日の相手の記憶が消える媚薬。手にしたのは胡散臭い上に倫理的に問題がある一錠だった。しかし、そもそも注文した時から理性など壊れてしまっている。彼女に一服盛ることに対しての罪悪感はもはやなかった。
性的に解放的になった女性に冷めてしまうのではないかと少し思っていたが、彼女はそれでも男慣れしていないことを隠せておらず、そういったところが酷く扇情的に思えて……私は彼女が声を上げるところへ、体を震わせる所へ、手を滑り込ませ、舌先でなぞり、足を絡めた。邪魔な衣服を乱暴に脱がせてしまうと、ふとひとつ、何か彼女のジャケットのボタンが飛んだような気がしたが、私も私で余裕がなく……まあ、いいか、などとらしくなく放り出し、露わになった彼女の首筋から乳房まで唇を這わせた。彼女が声をあげるほどに、私の体の中に一本通っている筋が抑えられなくなっていく。
「……ねえ、名前を、呼んで……」
彼女にそういった意識が残っているのかはよくわからなかったのに、私はそう言った。気づいたら、言っていた。抑えきれずに彼女の秘部と私の秘部が擦れ合い、淫らな音を立てる部屋の中で、私のそんな願いは、酷く不似合いにも思えた。だが。
「……な、つめ、さん」
彼女は無自覚にであろう、私のものに自分の秘部を擦り付けながら……時に入口へ誘おうとしながら、甘い声でそう言った。
びりっ、と、脳のどこかが痺れる感覚がした。ぷつん、となにかの糸が切れた音が聞こえた。私は動きを止め、しっかりと彼女の入口を自分の先で捕らえてから、そのまま思い切り――奥まで押し込んだ。彼女が荒く叫びながら体内を震わせて、私をぎゅうぎゅうと絞るように刺激する。甘い。耐えられない。唇を合わせて、舌を絡め、体を好きに触り、舐めまわし、しかし腰は止めずに。彼女はいくらでも喘いだ。私も獣のように彼女の中に自分を打ち付けるのを辞めなかった。
「……ねえ、名前、名前を、呼んで……」
「あ、あ、な、なつめ、さ」
「……みなみ、って……」
巳波って呼んで。なんて馬鹿なのだろう、と思いながらそう言って抱きしめると……小さく、しかし彼女は確かに呼んだ。
みなみ、さん……。
「……ああ、小鳥遊さん。……紡さん……紡。紡、紡……」
角度を変えて、もう一度。それを繰り返し。言えば彼女は私の名前を呼んだ。それ以外は、喘いでいるだけなのに。私はずっと彼女の名を呼んでいた。呼び続けた。呼び続けながら、中に、奥に、その奥に。どこまでも彼女の奥へ行きたくて、仕方がなくて、また体位を変えて、もっと奥へ、奥へ、乱暴に彼女を抱き続ける。何度も彼女が達する度に、中で私を締め上げる。耐え難いほどの、快楽。私も、気を抜いたらうっかり……すべてをぶちまけてしまいそうな、快感。けれど、まだ。まだ、感じていたい、まだこのままでいたい、と耐えて、耐えて、息を吸っては吐いて、彼女を貪った。
彼女は……どんな相手に告白されても同じ言葉で断っている。そんな様子を見ているうちに、芽生えていたこの恋情を叶えるのは無理だと早々に諦めようとした。けれど、出来なかった。彼女を見る度に、心が締め付けられていく。私が離れようとしても、彼女は私のパーソナルスペースに土足で踏み込んでくるし、私はそれが嫌ではない。どうしようもなかった。
だから。
だから、これで、最後にしたかったのだ。
「ああ、紡……紡、紡……」
名前を呼んだ。何度も。何度も。未来永劫、呼ぶことがないであろう人の名前を。愛する人の名前を。立ち上ってくる快感と絶頂の気配に、私は……彼女を抱きしめて、押さえつけて、そのまま欲望のすべてで彼女を突き続けた。
――一日ですべて忘れてしまう薬。彼女はもう、明日すべて忘れているのだろう。達する直前、私は抑えられない声を吐き出しながら、また彼女に言った。
「呼んで。呼んで。私を……呼んで」
「あ、ああ。ああ……あっ、……み、………」
――みなみ、さん。
「……つむ、ぎ……」
荒い息を吐き出しながら。全身で呼吸しながら。しかし、私は彼女の体を離さなかった。ひとつになったまま。彼女の奥と、繋がったまま。私は彼女を抱きしめたまま……その間には僅かコンマ数ミリの厚みすらない、私たちは真に繋がったまま、しばらくそうしていた。どろ、どろりと、自分の中から彼女の中へ、何かが流れ込んでいくのを感じながら。それに――満足しながら。彼女の唇を奪って、また、何度も唇を重ねて。
「……愛してる」
ぎゅっと抱きしめた彼女は、もうすやすやと眠ってしまっていた。私はしばらくしてから彼女から体を離し、タオルで彼女の体を綺麗に拭いてから、服装を戻していく。しかし……彼女の中から私の欲望が流れ出していくのが嫌で、指で詰め込んだ。何度も押し戻した。何度も、何度も。無駄だとわかっているのに、もう、流れてこなくなるくらいまで……。
「……本当に好き、だったのにな」
私に残るのはこんな思い出だけ。相手に薬を飲ませて、それでいいようにして、果ては避妊もせず無責任に欲望のままに貪っただけ。
虚しい。性行為の後の脱力感も加わり、私はなんだかより惨めになってしまった気分のまま、彼女のアパートを後にした。
何度もシミュレートして、いつも通り彼女に挨拶をして。翌日以降の彼女はいつもと何も変わらないままだった。天真爛漫な笑顔のまま、誰との距離も近く、しかし最後のラインは超えさせない。超えたことは、私の中だけの秘密だ。
休憩時間が重なって、彼女とのんびり会話をしながら、自分の感情に特に変化はなかったのかもしれない、なんて思う。一晩ですっぱりと諦められる恋ではなかった。ましてや、あんな姿を見て……。しかし、最初から最後まで許されざる行為をした自分には、今度こそ彼女に想いを伝える資格などないと思った。今では毎日、少しずつ小さな諦めを重ねてみている。いつか、もういいや、となれるように。良き友でいられるように。
やがて時が経ち、休憩時間を彼女と二人で過ごしていると、そういえば、と彼女が切り出した。
「最近、体調があまり思わしくなくて。……その、男性に言うのはアレかもしれませんが……生理も、しばらく来てなくて不安なんですよね……」
「……え」
ピリッ、と急に空気が冷えた気がして、私は頬をかいた。
大丈夫ですか?病院には行きましたか。普通ならさらっと言えたであろう言葉が、すぐに言えない。
――言えるわけが無い。
「心当たりは、何も無いんですよね。私、その……こ、恋人も……いなくて……」
――心当たりなら、思い切り、ある。
「……す、すみません。棗さん博識だから、こういう時どうしたらいいかアドバイスくださるかなー、なんて一瞬思ってしまって。あとそういえば私、ジャケットのボタンも一個どっかに落としてて……あ、すみません、どうでもいい話ばっかりで……あはは、それでは……」
「……あ、ま、待って!」
「え……」
離れようとした彼女の腕を慌てて掴んだ。彼女はぽかんとしたまま、私をじっと見つめている。純粋な眼のまま。私を何一つ疑わぬ、無垢な顔のまま。
「……ます」
「え?」
「……ついて行きます。婦人科……一緒に、予約取りましょう……」
「……なんで棗さんが……え?婦人科?」
「……私は……」
しばらく言葉が出てこなかった。彼女の言葉に混乱していたし、しかしここですべて言ってしまって、全然違ったらどうする、という不安もあって。事実を知ったら、彼女は自分をどう思うかとか、他にも様々な弱い考えが一瞬頭を巡り……しかしやがて、小さく息を吸って。
「中途半端な男のままで、いたくないんですよ」
今夜でも予定が合うなら夜間診察のところへ行きましょう、と半ば強引に誘い、他の人には口止めして、彼女を離した。終始混乱気味の彼女と別れてから、私は壁にもたれ掛かり……大きく、それはもう大きなため息をついた。
「……これが、責任、ってやつ……」
もし、私が想像している通りだったら、彼女は突然の妊娠に何を思うのだろう。私との子供だと言われて、喜ぶだろうか?私が彼女をいいようにしたことが、果たして許されるのだろうか?
嬉しい、では済まされない。気持ちいい、では終われない。勝手に私の感情が落ち着いてしまっても、これが現実。けれど、彼女へ言ったとおりだ。両頬をぱんと叩いて、前を見る。
――らしくない。
「……はあ。事実をまとめて、説明できるようにしておかないといけませんね……」
みなみ、さん。
忘れようとしていたあの日の彼女が私を呼ぶ声が聞こえた気がして、私はそっと、目を閉じた。
畳む 72日前(木 22:40:31) SS
金さえ出せば、世の中とんでもない物が手に入ったりするものだ。手に入った錠剤を見た時には懐疑的だったが、こっそり溶かした水を彼女が飲んで一時間、その説明の全てが嘘ではなかったことに驚いた。
「なつめ、さん」
荒くなっていく息と、熱を帯びていく体。濡れた瞳が、私をじっと見据えて、欲情していた。
眠ればすべて、その日の相手の記憶が消える媚薬。手にしたのは胡散臭い上に倫理的に問題がある一錠だった。しかし、そもそも注文した時から理性など壊れてしまっている。彼女に一服盛ることに対しての罪悪感はもはやなかった。
性的に解放的になった女性に冷めてしまうのではないかと少し思っていたが、彼女はそれでも男慣れしていないことを隠せておらず、そういったところが酷く扇情的に思えて……私は彼女が声を上げるところへ、体を震わせる所へ、手を滑り込ませ、舌先でなぞり、足を絡めた。邪魔な衣服を乱暴に脱がせてしまうと、ふとひとつ、何か彼女のジャケットのボタンが飛んだような気がしたが、私も私で余裕がなく……まあ、いいか、などとらしくなく放り出し、露わになった彼女の首筋から乳房まで唇を這わせた。彼女が声をあげるほどに、私の体の中に一本通っている筋が抑えられなくなっていく。
「……ねえ、名前を、呼んで……」
彼女にそういった意識が残っているのかはよくわからなかったのに、私はそう言った。気づいたら、言っていた。抑えきれずに彼女の秘部と私の秘部が擦れ合い、淫らな音を立てる部屋の中で、私のそんな願いは、酷く不似合いにも思えた。だが。
「……な、つめ、さん」
彼女は無自覚にであろう、私のものに自分の秘部を擦り付けながら……時に入口へ誘おうとしながら、甘い声でそう言った。
びりっ、と、脳のどこかが痺れる感覚がした。ぷつん、となにかの糸が切れた音が聞こえた。私は動きを止め、しっかりと彼女の入口を自分の先で捕らえてから、そのまま思い切り――奥まで押し込んだ。彼女が荒く叫びながら体内を震わせて、私をぎゅうぎゅうと絞るように刺激する。甘い。耐えられない。唇を合わせて、舌を絡め、体を好きに触り、舐めまわし、しかし腰は止めずに。彼女はいくらでも喘いだ。私も獣のように彼女の中に自分を打ち付けるのを辞めなかった。
「……ねえ、名前、名前を、呼んで……」
「あ、あ、な、なつめ、さ」
「……みなみ、って……」
巳波って呼んで。なんて馬鹿なのだろう、と思いながらそう言って抱きしめると……小さく、しかし彼女は確かに呼んだ。
みなみ、さん……。
「……ああ、小鳥遊さん。……紡さん……紡。紡、紡……」
角度を変えて、もう一度。それを繰り返し。言えば彼女は私の名前を呼んだ。それ以外は、喘いでいるだけなのに。私はずっと彼女の名を呼んでいた。呼び続けた。呼び続けながら、中に、奥に、その奥に。どこまでも彼女の奥へ行きたくて、仕方がなくて、また体位を変えて、もっと奥へ、奥へ、乱暴に彼女を抱き続ける。何度も彼女が達する度に、中で私を締め上げる。耐え難いほどの、快楽。私も、気を抜いたらうっかり……すべてをぶちまけてしまいそうな、快感。けれど、まだ。まだ、感じていたい、まだこのままでいたい、と耐えて、耐えて、息を吸っては吐いて、彼女を貪った。
彼女は……どんな相手に告白されても同じ言葉で断っている。そんな様子を見ているうちに、芽生えていたこの恋情を叶えるのは無理だと早々に諦めようとした。けれど、出来なかった。彼女を見る度に、心が締め付けられていく。私が離れようとしても、彼女は私のパーソナルスペースに土足で踏み込んでくるし、私はそれが嫌ではない。どうしようもなかった。
だから。
だから、これで、最後にしたかったのだ。
「ああ、紡……紡、紡……」
名前を呼んだ。何度も。何度も。未来永劫、呼ぶことがないであろう人の名前を。愛する人の名前を。立ち上ってくる快感と絶頂の気配に、私は……彼女を抱きしめて、押さえつけて、そのまま欲望のすべてで彼女を突き続けた。
――一日ですべて忘れてしまう薬。彼女はもう、明日すべて忘れているのだろう。達する直前、私は抑えられない声を吐き出しながら、また彼女に言った。
「呼んで。呼んで。私を……呼んで」
「あ、ああ。ああ……あっ、……み、………」
――みなみ、さん。
「……つむ、ぎ……」
荒い息を吐き出しながら。全身で呼吸しながら。しかし、私は彼女の体を離さなかった。ひとつになったまま。彼女の奥と、繋がったまま。私は彼女を抱きしめたまま……その間には僅かコンマ数ミリの厚みすらない、私たちは真に繋がったまま、しばらくそうしていた。どろ、どろりと、自分の中から彼女の中へ、何かが流れ込んでいくのを感じながら。それに――満足しながら。彼女の唇を奪って、また、何度も唇を重ねて。
「……愛してる」
ぎゅっと抱きしめた彼女は、もうすやすやと眠ってしまっていた。私はしばらくしてから彼女から体を離し、タオルで彼女の体を綺麗に拭いてから、服装を戻していく。しかし……彼女の中から私の欲望が流れ出していくのが嫌で、指で詰め込んだ。何度も押し戻した。何度も、何度も。無駄だとわかっているのに、もう、流れてこなくなるくらいまで……。
「……本当に好き、だったのにな」
私に残るのはこんな思い出だけ。相手に薬を飲ませて、それでいいようにして、果ては避妊もせず無責任に欲望のままに貪っただけ。
虚しい。性行為の後の脱力感も加わり、私はなんだかより惨めになってしまった気分のまま、彼女のアパートを後にした。
何度もシミュレートして、いつも通り彼女に挨拶をして。翌日以降の彼女はいつもと何も変わらないままだった。天真爛漫な笑顔のまま、誰との距離も近く、しかし最後のラインは超えさせない。超えたことは、私の中だけの秘密だ。
休憩時間が重なって、彼女とのんびり会話をしながら、自分の感情に特に変化はなかったのかもしれない、なんて思う。一晩ですっぱりと諦められる恋ではなかった。ましてや、あんな姿を見て……。しかし、最初から最後まで許されざる行為をした自分には、今度こそ彼女に想いを伝える資格などないと思った。今では毎日、少しずつ小さな諦めを重ねてみている。いつか、もういいや、となれるように。良き友でいられるように。
やがて時が経ち、休憩時間を彼女と二人で過ごしていると、そういえば、と彼女が切り出した。
「最近、体調があまり思わしくなくて。……その、男性に言うのはアレかもしれませんが……生理も、しばらく来てなくて不安なんですよね……」
「……え」
ピリッ、と急に空気が冷えた気がして、私は頬をかいた。
大丈夫ですか?病院には行きましたか。普通ならさらっと言えたであろう言葉が、すぐに言えない。
――言えるわけが無い。
「心当たりは、何も無いんですよね。私、その……こ、恋人も……いなくて……」
――心当たりなら、思い切り、ある。
「……す、すみません。棗さん博識だから、こういう時どうしたらいいかアドバイスくださるかなー、なんて一瞬思ってしまって。あとそういえば私、ジャケットのボタンも一個どっかに落としてて……あ、すみません、どうでもいい話ばっかりで……あはは、それでは……」
「……あ、ま、待って!」
「え……」
離れようとした彼女の腕を慌てて掴んだ。彼女はぽかんとしたまま、私をじっと見つめている。純粋な眼のまま。私を何一つ疑わぬ、無垢な顔のまま。
「……ます」
「え?」
「……ついて行きます。婦人科……一緒に、予約取りましょう……」
「……なんで棗さんが……え?婦人科?」
「……私は……」
しばらく言葉が出てこなかった。彼女の言葉に混乱していたし、しかしここですべて言ってしまって、全然違ったらどうする、という不安もあって。事実を知ったら、彼女は自分をどう思うかとか、他にも様々な弱い考えが一瞬頭を巡り……しかしやがて、小さく息を吸って。
「中途半端な男のままで、いたくないんですよ」
今夜でも予定が合うなら夜間診察のところへ行きましょう、と半ば強引に誘い、他の人には口止めして、彼女を離した。終始混乱気味の彼女と別れてから、私は壁にもたれ掛かり……大きく、それはもう大きなため息をついた。
「……これが、責任、ってやつ……」
もし、私が想像している通りだったら、彼女は突然の妊娠に何を思うのだろう。私との子供だと言われて、喜ぶだろうか?私が彼女をいいようにしたことが、果たして許されるのだろうか?
嬉しい、では済まされない。気持ちいい、では終われない。勝手に私の感情が落ち着いてしまっても、これが現実。けれど、彼女へ言ったとおりだ。両頬をぱんと叩いて、前を見る。
――らしくない。
「……はあ。事実をまとめて、説明できるようにしておかないといけませんね……」
みなみ、さん。
忘れようとしていたあの日の彼女が私を呼ぶ声が聞こえた気がして、私はそっと、目を閉じた。
畳む 72日前(木 22:40:31) SS
リュウ
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「もっとルドウィンをこう、蹂躙してやりたいのよね…」と野望を話すみづきちと「ほーん。できんの?」ってニヤニヤするアグノム
づきちってアグノムに性事情とか絶対最初は話したがらないけど結局のところきたにぃには言えないし、他の人に言うのも恥ずかしいし、カイトには言うかもしれんがいちばん身近なのはアグノムなのかもしれん
からかわれるのは嫌だが、たまに的確なアドバイスとかしてくれそうではある 長く生きてるし人間との種族差恋愛についてもまあまあ語れるでしょう(アグノム本人が本気で愛した女はいなそうだがな……) 72日前(木 19:34:05) 創作語り
づきちってアグノムに性事情とか絶対最初は話したがらないけど結局のところきたにぃには言えないし、他の人に言うのも恥ずかしいし、カイトには言うかもしれんがいちばん身近なのはアグノムなのかもしれん
からかわれるのは嫌だが、たまに的確なアドバイスとかしてくれそうではある 長く生きてるし人間との種族差恋愛についてもまあまあ語れるでしょう(アグノム本人が本気で愛した女はいなそうだがな……) 72日前(木 19:34:05) 創作語り