No.1710
リュウ
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愛妻の日ミクミヅSS 【AGAIN3-0-0】
「今日もね、二人ともご飯をいっぱい食べたよ。ミトも元気に動けてた。もうね、すっかり大きくなったよ」
彼女のような美しい花をそっと供えながら、僕は笑顔で続ける。
「君が産んでくれたおかげだよ。僕は今日も幸せだった。あの子達の父親で、本当によかった」
当然ね、と彼女が笑ったような気がして、零れそうになる涙をこらえた。泣いては彼女に心配をかけてしまうな、と、深く息を吸う。
「……」
口を開きかけたが、言葉が音を持つことは無かった。言えるはずがなかったし、言ったところでどうなることでもなかった。わかっている。わかっているんだ、そんなことは。
もう二度と彼女には会えない。だから、こんな気持ちを抱えていたって……。
「……でも」
もう一度、君に触れたい。君を抱きしめたい。君に口付けをしたい。溢れる願いは叶わない。
彼女の眠る石碑に背を向けた。闇夜でも目が利くのは彼女のおかげだ。もういない彼女は、今でも僕の中に強く深く刻み込まれている。二度と忘れることなどない。僕のこの少し冷たい体温も、時に死ぬほど愛おしくなるのは、それが彼女にもらったものだからだ。
「……ああ、今日はだめだなぁ」
どこで隙間が空いたのだろう、心に風が入ってきて、胸が痛む。当たり前のように無視できていたことを、今日は何故だか見てしまう。隣にいない彼女の姿を見た気がして、一瞬身を震わせた自分に、笑いとも泣き声ともわからない声が出る。
「……会いたいよ、」
この世で一番愛した人の名前が、静かに闇に飲まれていく。
【AGAIN3-0-0】畳む 1年以上前(水 23:53:25) SS
「今日もね、二人ともご飯をいっぱい食べたよ。ミトも元気に動けてた。もうね、すっかり大きくなったよ」
彼女のような美しい花をそっと供えながら、僕は笑顔で続ける。
「君が産んでくれたおかげだよ。僕は今日も幸せだった。あの子達の父親で、本当によかった」
当然ね、と彼女が笑ったような気がして、零れそうになる涙をこらえた。泣いては彼女に心配をかけてしまうな、と、深く息を吸う。
「……」
口を開きかけたが、言葉が音を持つことは無かった。言えるはずがなかったし、言ったところでどうなることでもなかった。わかっている。わかっているんだ、そんなことは。
もう二度と彼女には会えない。だから、こんな気持ちを抱えていたって……。
「……でも」
もう一度、君に触れたい。君を抱きしめたい。君に口付けをしたい。溢れる願いは叶わない。
彼女の眠る石碑に背を向けた。闇夜でも目が利くのは彼女のおかげだ。もういない彼女は、今でも僕の中に強く深く刻み込まれている。二度と忘れることなどない。僕のこの少し冷たい体温も、時に死ぬほど愛おしくなるのは、それが彼女にもらったものだからだ。
「……ああ、今日はだめだなぁ」
どこで隙間が空いたのだろう、心に風が入ってきて、胸が痛む。当たり前のように無視できていたことを、今日は何故だか見てしまう。隣にいない彼女の姿を見た気がして、一瞬身を震わせた自分に、笑いとも泣き声ともわからない声が出る。
「……会いたいよ、」
この世で一番愛した人の名前が、静かに闇に飲まれていく。
【AGAIN3-0-0】畳む 1年以上前(水 23:53:25) SS
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