全年3月11日の投稿[24件]
待って、と言ったのは確かに私だ。ちょっと待って、少し待って、あと少しだけ待って。便利な言葉に甘え続け、一線を引き伸ばし続けようとして、ついにその長い足に止められてしまったようだ。不機嫌というよりは拗ねたように、隠していない方の瞳を吊り上げた。
「お前さんの言う"あと少し"は、一体全体いつになったら訪れるんだ?」
私を逃がすまいと両手首を掴む手に、見た目ほど力は入っていない。私が振りほどこうと思えば簡単に出来るだろう。形だけの拘束は、ただ私に、もう逃げるなと告げるため。実際、私は今までの彼からのさりげないアプローチに、全て気付かぬふりをして、蓋をして、ここまで来た。この状況になってもなお、まだ逃げようとしている自分に呆れを感じていると、それすら許さないといったように顔を覗き込まれ、目を閉じた。
「なあ」
視界の奥で、彼が言う。急かす勢いはない。けれど、どこか願いが篭っているようで、無視することは出来なかった。
数度深呼吸をして、目を開けた。彼と、そして現実と、しかりと目を合わせ、声にならない声を、どうにか言葉にするように。
「……明日」
「……明日?」
訝しむように、彼は私の言葉をなぞった。私は一度頷いて……出てきたのは、蚊の鳴くような声。けれど、彼はそっと目を見開く。
__明日、なら、良い、けど。
この期に及んで真っ直ぐに告げられないのが、自分でも阿呆らしい。吐きそうになる程に暴れる心臓は落ち着かず、黙ってしまった彼の顔を見続けることも出来ず。しかし、ふうん、と言いながら、彼はそっと私の頬に触れ、顎に指を滑らせる。たった指ひとつで、奪われる主導権。
先程の陰はどこへやら、彼はご機嫌な口角を隠そうともしないまま、柔らかく目を細めた。
「残念だな、明日は忙しかったのに」
「なら、別に」
「予定を空けないといけないようだ」
「……空けたいんでしょ?」
子供のように勢いを取り戻した彼に、皮肉をひとつ。刹那、こつりと額に淡い衝撃。
あ、待っ__。
何度も使った便利な言葉は、発することを許されなかった。永遠にも感じられた柔らかな接触が唇を離れ、彼の使う力と正反対の熱を感じ、全身が泡立って。
「……明日まで、待ってやるから」
彼は、それじゃあ、と言って手を離す。去っていく背中。去り方はいつにも増して優雅に見えた。
そ、と唇にひとさし指で触れる。
「あ、明日……」
口をついて出てしまった言葉を、既に後悔している。しかし、どこかでこれ以上の熱を期待している私もいる。ええい、どうにでもなればいい、と私はベッドに潜り込んだ。
夜は更けていく、瞼の裏に、ご機嫌な彼を浮かべながら。畳む 13日前(水 17:50:07) SS
でもプチプラかって言われたらそうでは無い気がした……いや香水としてはプチプラか?たいていコスメのプチプラ、私にとってはプチじゃないよ案件多いからバグる 1年以上前(火 17:32:39) 日常





