屋根裏呟き処

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No.7690, No.7689, No.7688, No.7687, No.7686, No.7685, No.76847件]

NO IMAGE リュウ ルナアーラとソルガレオはこいつらを敬えよ
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NO IMAGE リュウ みなつむSS 逆さまのお月様

   久方ぶりに足を踏み入れた彼女の部屋に、見慣れないものがひとつ増えていて、お茶を淹れますと言ったその背を見送りつつ、そっと近づいた。インテリアの一種かと思ったが、確かにどこか使ったあとの印象がある、タロットカードの大アルカナが堂々と棚の上を占領していた。
「あ、それ……」
    決して安価では無かったであろうカードの趣向を手で触りながらその高級感あるざらつきに微笑んでいると、ティーカップをふたつ、紡さんが盆に乗せて運んできた。ローテーブルにふたつ並べ、壁に立てかけてあったクッションを同じように置いてから、私の隣に並んだ。
「タロットカードなんて持っていらっしゃったんですね」
「ええっと……巳波さんに、影響を受けまして……」
「私に?」
「巳波さん、よく色々と占って下さるじゃないですか。だから、私にも出来る占いやってみようかなって思って。そしたら……綺麗なカードにご縁があって」
「なるほど。タロットはやり方が分かれば出来るものですしね。楽しんでいますか」
「ええ、毎日、今日の運勢を一枚引くことにしています。……ですが……えへへ、まだまだ初心者なんでしょうが、占いで落ち込むこともあって」
「と、言いますと?」
    並んでいるカードのひとつを指しながら、なんとも言い難い微妙な笑顔で、紡さんは伺うように私を見やった。
「今日のカードは月の正位置、ってやつで。いくら調べても不穏なことしかなくて……実際、今日あんまよくない日だったし。なんだかこういうことが続くと嫌だなあ……なんて。占いへの道は、険しそうです」
「ああ……そういうことでしたか」
    少し悲しそうな顔をしながらそう言った彼女の眉間のシワを人差し指で伸ばしながら、くすくす笑う私に彼女は首を傾げた。私はそっと棚の上の月のタロットを手に取った。
「占いで難しいのは、占い自体よりもリーディングかもしれませんね。……ねえ、紡さん、私はご存知の通り占いの類が好きですが、占いとは悪いことを避けるため、身を守るため……つまるところ、人が幸せのために作った方法です。ですから、見通しの立たないカードの日も、一縷の見通しを立てるために読んでいいのです」
「で、でも……他にも、塔のカードの日にも、あまり調子が良くなくて、やっぱタロットって当たるんだなあって……!」
「フォアラー効果というやつですね」
「フォアラー……」
「貴方を占いました、と言って、曖昧だが誰にでも当てはまりそうな言葉で同じ診断を複数人に配ったところ、大方の人々が自分のことだ、と思ったという実験があったそうで。占いとは言ってしまえばそのように人に当てはまるように作られた統計ですから」
「……で、でも……」
    納得いかないのだろう、少しむくれた様子の紡さんは可愛らしい。スポンジのように全てを直ぐに飲み込む素直な一面と対になるように持ち合わせている、自分で実感しないと納得出来ないこの頑固な側面も、私が好ましいと感じているひとつだ。
    ならば、と私はそっと月のタロットを手に取り、彼女の目の前でくるりと向きを変えた。ぽかんとする彼女に微笑み、私は一言。
「今日の紡さんの一日はワンオラクルで大アルカナの月……の、逆位置かもしれません」
「……え?だ、だって、ちゃんとカードの向きは見ましたよ……?」
「けれど、初心者の貴方はうっかり引き方を間違えたり、シャッフルを間違えたのかもしれません」
「そんなあ、だって」
「絶対に言いきれますか?」
「そう、言われますと、自信が……」
「はい。それに……ふふ。今日は……こうして、会えたじゃないですか?」
    はっ、と弾かれたように紡さんが私を見上げる、その頬は少しずつ赤く染っていく。すみません、こんなことで、と反射的に口を動かず焦る彼女の頬にそっと片手を添えて、するり、撫で下ろすと分かりやすく身体が強ばって、そんな可愛らしさにまた、ふふ、と笑ってしまう。
「月の逆位置……月夜で見えづらいものに、ようやく触れられる事の暗示です。例えば、何か起こると敏感になり過ぎて悲観的になっていたり、過剰に占いを盲信して不安になっていたことへの終わり……そして……」
「……そして?」
    興味津々といった調子で、無意識だろう、少しずつ私に近づいてきていた彼女の耳にそっと口を近づけて、囁いた。
「……恋愛面においては……進展があることの、暗示、とも読めますよ。……さて?」
「ふぁ!?ふぉ、フォアラー効果、でしょう!?あ、お、お茶冷めちゃってるかも!」
「ふふ。これは占いをした上でのリーディングですよ。何がどう進展するのかは、お茶を飲んでからでも読みましょうか」
「け、結構です!」
    からかいすぎたかもしれない。耳まで色が染まりきった彼女は少し拗ねたように、改めて私をローテーブルに招いた。私はそっと、棚の上に逆さまの月を置いてから、彼女の向かいに座る。
    先輩として、明日からの彼女の占いが、彼女を幸せにするものとなるよう、悪戯のまじないをかけて。
畳む

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NO IMAGE リュウ レオ様の歌声一織すぎてびびてる
NO IMAGE リュウ 死にそうな体調………
NO IMAGE リュウ トワペの夢 3Dライブ(リアルだしコテージみたいな所でめちゃくちゃ近い)コスプレ紹介という名のロリ系コーデ解説「下着つけておかないとこの角度でも見えちゃう〜」同窓会、私が座りたいところに豚トロのピザを置かれる
NO IMAGE リュウ ホストパロみなつむ これも愛のカタチでしょ
(歌詞引用 ROMANCE/JanneDaArc)

「……無理、しなくていいんですよ、紡……」
    うぷ、と小さくげっぷを逃がしながら、まだ飲みきれていないグラスの中身に、胃なのか肝臓なのかはたまた臓器ではない精神的な胸の奥か、居所のはっきりしない重みがかさなる。それらをないものとして笑っている今の私の笑顔は、はたして歪んでいないだろうか。しかし、目の前の私のエースは、歯牙にもかけていないご機嫌さだ。
「無理なんてしていませんよ。でも、私がある限り、巳波さんにはずっと一番輝いていて欲しいのです」
「輝いていますよ。ほら、グラスの中身に映る私、キラキラしてるでしょう」
「やだなあ、それはお店の照明でしょう?」
「……あはは」
    勘弁してくれよ、と思いながら、無邪気さのあまり邪悪さの塊となっている姫から目を逸らした。なんとか飲み干せば終わりだ。ラストオーダーであることに気づかせぬよう、気分を害さぬようにとグラスを操っていたところ、我が優秀な姫君は少し笑みを緩めて……目つきだけ鋭く、店内を見渡して、言った。
「……そろそろ、ラストのお時間ですよね」
   ――勘弁してくれよ。もうたくさんです。結構です。少し休ませてください。酒焼けと連日のラストソングで、もう、喉が。
「……巳波さん、追加で、これ……お好きでしたよね?」
「……ありが、と、う、紡……」
    私が言う前に注文を呼んだ紡と、どんな顔でいるのかわからない私を見比べて、同僚は憐れむような顔をしつつコールを煽り始める。ああ、これで今夜も私が一位だろう。
『それでは〜!愛しの姫より一言〜!』
    マイクを向けられた私の姫は、もう慣れっこのくせに毎度初々しく、両手で受け取り、わざとらしく最初に言い淀む。
『え〜っとぉ……』
    頼む。頼みますよ。もう、連勤で、キッツイんです、毎日貴方の相手をするのが。頼むから連勤終わりの今日くらい、平和に終わらせて。……そんな願いで笑顔が引きつっていたのかもしれない。私をちらりと見るなり、姫はにっこりと、完璧に微笑んで、控えめな声をスピーカーに載せる。
『明日も楽しみですね〜、よいちょ……』
    マイクを手放し、そっとウインクをした私の姫は得意気で、もう何処までが天然でどこからが計算なのかもわからない。飲め飲めと言われるまま、気が狂うまで液体を喉に放り込み、その度に喉が熱く、胃が熱く、頭が痛くなっていく。
    会いに来るつもりかぁ……ぼんやりとしながら、結局最後にマイクを持たされた。もう抵抗しない私に、姫は控えめに腕をからませながら、上目遣いに微笑む。
『……無邪気に笑う君を見てると〜……と〜きどき少し胸が苦しくてぇ……』
    うっとりとした姫、反して盛り下がる店内、選曲は最悪だ。わかっている。けれど。
『これも愛のカタチでしょ〜……』
    もうやる気のない私の歌声は、皆にどう聞こえているのだろうか。
『未来の〜ない……関係には……終わりは……なぁい、だって……』
    ――私たちって、いつ"始まった"のだろうか。
『始まってもないから。』
    歌いながらちらりと隣の姫を見やる。
    目が合った私の姫は、二重にぼやけて、相変わらず無邪気な笑顔で、百二十パーセント、笑っていた。
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