屋根裏呟き処

好き勝手雑多TL

■案内所 編集

気軽にweb拍手押していってね!
メッセージもどうぞ!
(お返事はうちの子から/拍手絵は整備中)

頂いた拍手へのお返事一覧

リクエストは お題箱

お問い合わせは メール

その他は lit.link から

20240924追加 onelinkers SNSをまとめています

since 20230821

or 管理画面へ

No.6610

Icon of reverseroof リュウ みなつむSS こたつ

「炬燵を買うか迷っているんですよね」
    彼女の赤切れた手にクリームを塗っていると、たまに染みるのだろう、彼女は眉をしかめつつも、そんな私たちの手を見つめている。
「まあ確かに、貴方は別に……炬燵から出られなくて困るようなタイプじゃありませんし、いいんじゃないですか」
「そうですかねえ……布団からはよく出られなくって……冬はもう、ギリギリの出社になってますよ」
「それで最近お化粧がシンプルなんですね」
「……やっぱ手抜きに見えます?」
「いえ、手抜きとまでは。オフィスメイクとしてはいいんじゃないですか……はい、出来た。ちゃんとマメにクリーム塗ってくださいよ、せっかくプレゼントしたのに」
「……ついつい、時間が勿体なくて」
「ハンドクリームを塗る時間まで焦らなくていいでしょう?一分もあれば出来ることですよ」
    ハンドクリームの蓋をしめる、その時に、開けた時と同じようにまた柔らかな花の香りが鼻腔を擽った。私から彼女へ、ちょっとしたプレゼントがしたくて選んだ物だ。そのまま彼女のポーチへ戻す。選ぶ前にそれとなくリサーチした時は、手が荒れて困っているだなんて言っていたのに、あまり使っている様子は見られない。……贈り物に失敗した気がして、こうして会う度に無理やり彼女の手に塗り込むのが恒例になってしまっている。
    彼女は彼女で、ポーチを受け取りながら自分の手を見つめて軽く口元を歪めている。
「何がおかしいんです」
「……いいえ。だって、巳波さんがいつも塗ってくださるから」
「貴方が自分で塗らないから」
「それが良いんですよ」
「……何も良くないですよ?」
「良いんですよ」
    ポーチを雑にカバンに放り投げて、彼女は炬燵の中に手を入れて、私に体重を預けた。私は彼女を受け止めつつ、同じように手まで炬燵に入れ込んだ。二人で寄り添い温まる。
「やっぱりいいなぁ、炬燵、あったかいですね」
「そんなに気になるのなら、一度買ってしまえばいいのに」
「うーん、でもなぁ……もう少し……巳波さんの家で試着してからにしちゃおうかな」
「炬燵って、試着、ではないでしょう」
    若干ため息をつきつつ、目を閉じて彼女の首元に頭を埋める。
「冬の貴方、どうしようもない人ですね」
「そうなんです。どうしようもないので、お世話焼いてくださいね」
    そう言って幸せそうに笑う彼女を見て、ああ、甘やかしすぎたかな、なんて、少し呆れた。

畳む

20241216104857-reverseroof.jpg 202412161048571-reverseroof.jpg