屋根裏呟き処

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No.1716, No.1715, No.1714, No.1713, No.1712, No.1711, No.17107件]

Icon of reverseroof リュウ ミクミヅ 出産前

「なあに、それ」
「手袋だよ」
 ぱちぱちと音を立て、赤く光を放ち続ける暖炉の隣で、棒を両手に、くるくると毛糸を回し、形を作っていく僕の指先を、彼女は吸い込まれるように見ていた。僕は危ないよと声をかける。集中している時の彼女は、気づいているのだろうか、眉間の皺が濃くなるが、それもまた愛しくて、思わず口が緩んでしまう。そんな僕を見て、彼女はそのままの顔で、やや首をかしげた。……その間も、手は彼女の少し膨らんだ腹部を撫でている。
 その姿に、ああ、たしかに母親だ、と思う。彼女の胎内には、いるのだ、一人の命が。
「もうすぐ冬だからね。生まれてくる子が、寒くないように」
 僕がそう言うと合点が言ったのか、彼女の表情がぱっと明るくなる。逆ハの字の眉がなだらかになる。すぐにころっと変わった柔らかな表情で、僕を見上げて、えへへ、と笑う。
 ああ、なんて幸せなんだろう。
「……女の子かなあ、男の子かなあ」
「トキはまだわからないって言ってたね」
「うーん、でも、たぶん、女の子だよ」
「そっか。お母さんだもんね」
「うん!そう!あたし、お母さんになるの!」
 うん、と頷くと、キラキラとした笑顔で彼女が少し僕に近づいた。編み物の手を止めると、僕はそれを足元のカゴに戻して、そのまま彼女を膝にのせた。彼女の背を支え、僕も彼女の腹部に載せられた手の上に、手を添える。そうしてお互い見つめ合うと、自然と笑顔になる。
「……もうすぐだね」
「……うん」
「体調は大丈夫?」
「問題ないよ!トキも言ってた」
「そっか、じゃあ安心だね」
 もちろん安心できないことはわかっている。彼女はいま、命懸けで命を背負っている。出産にも、何が命取りになるかわからない。毎日がサバイバルのようなものかもしれない。僕はそれを肩代わりすることも、一緒に持つことも出来ず、ただ歯がゆい思いをするだけだ。
 けれど、そんな彼女の一番そばにいることなら、きっとできる。そう思って、僕は今日も彼女の手を握る。
 彼女は顔を赤くしながら、あっちをみたりこっちをみたりして、ゆっくりと僕を見上げる。僕が笑うと、彼女もまた、控えめに笑った。
「……そろそろ寝よっか」
「うん」
 僕は彼女を姫抱きにしたまま、寝室へと向かう。歩くのも体力を使うから、歩ける時と歩けない時があった。身体に限界がきてる彼女が子を授かり、出産など、誰から見ても大変危険なことだった。それでも。
「えへへ、あたし、お母さんになっちゃうのね」
 そう言って楽しそうに笑う彼女が、ずっと家族が欲しいといっていた彼女が、頑張るのなら、僕はただ手を握り、後押ししてあげたいのだ。
 ベッドに寝かせて、電気を消し、彼女のおでこに口付けをする。寝るまでいてよ、と彼女は僕の服の裾を引っ張った。僕はベッドのふちに腰掛け、彼女の頭を撫でる。
「ねえ?」
「なあに」
「あのね、あたしにも作って、手袋。赤いのがいいな」
「わかった、任せて」
「でね、でね、ミクも作ってね」
「うん」
「赤ちゃんとね、三人でね」
 おそろいがいいなぁ。そう言いながら眠りに落ちていった彼女の頬に口付けをして、毛布をもう一枚かけてやり、それからまた暖炉のそばへ戻ると、編み物の続きを始めた。
 家族3人でお揃いの手袋。世界に一つしかない僕達の手袋を編むのだ。畳む
Icon of reverseroof リュウ ちゃんといくら引き出さないといけないかの計算しないとなあ
Icon of reverseroof リュウ メンタルヘラりのときはやはり早めのお布団、ぼんやり創作妄想、気がついたら夜中のコンボが1番いいのかもしれん
Icon of reverseroof リュウ クレカ切り替わったぞ!おい!(救い)
Icon of reverseroof リュウ ルドミヅR18 現代デート

レイノラルにルドウィン連れてきた回
2人でのんびりデート、ウィンドウショッピング、普通にはしゃいでるミヅキと裏腹にルドウィンはレイノラルのえっちな道具、おもちゃなどをしっかり発見し「感度何倍!」「今までにない締まり!」とかいう文句を見つつ収穫していって、夜に隊舎に帰ったあと「たいちょ、これ試してみようよ」って買ってきたものをアレコレ試そうとするルドウィンと、必死で抵抗するものの流されて結局色々お試しさせられるミヅキ
道具を使わない日と全然違うのでイキっぱなし、そんなところ!?、もう許してえなどが出るが「へーこれ結構使えるねえ」と言いながらやめない鬼畜ルドウィンの夜畳む
Icon of reverseroof リュウ 八原兄妹SS ふくれっつら

やっぱりな、と苦笑いをした。玄関扉を開けてすぐ飛び込んできたのは、腕を組んで仁王立ちした妹のふくれっ面。これは怒ってるぞ、と身構えていると「怒ってるわよ!」と声に出され、笑いそうになるのを堪える。
「遅かったようだけど!」
「悪い、急な仕事でさ」
「今日休みって言ってたのに!」
「ごめんな」
俺の仕事はまだ売れない歌手。それでもありがたい事に、最近貰える仕事が少しずつ増えてきたところで、舞い込む仕事は事務所も断らない。今日は休みで妹と遠出する予定にしていたのだが、朝連絡が来て、仕事になったのだった。
最初はガミガミと言っていた妹は次第に勢いをなくし、目線が下がり、瞳が潤んでいる。さみしい思いをさせたのだなと思い、そっと頭を撫でると、しおれた顔で俺を見上げる。
俺はしばらく迷ってから、玄関のほうを指さして言った。
「よし、いまから行くか!」
「え?今から?」
時刻は23時を過ぎているが、まあ問題ないだろう。車を使える知り合いに手早くスマホでメッセージを送り、口を開けたままぼんやりとしている妹にほほえむ。
「まだ今日は終わってないからな」
ほんっと、しょうがないなあ!妹が笑う。畳む
Icon of reverseroof リュウ 愛妻の日ミクミヅSS 【AGAIN3-0-0】

「今日もね、二人ともご飯をいっぱい食べたよ。ミトも元気に動けてた。もうね、すっかり大きくなったよ」
 彼女のような美しい花をそっと供えながら、僕は笑顔で続ける。
「君が産んでくれたおかげだよ。僕は今日も幸せだった。あの子達の父親で、本当によかった」
 当然ね、と彼女が笑ったような気がして、零れそうになる涙をこらえた。泣いては彼女に心配をかけてしまうな、と、深く息を吸う。
「……」
 口を開きかけたが、言葉が音を持つことは無かった。言えるはずがなかったし、言ったところでどうなることでもなかった。わかっている。わかっているんだ、そんなことは。
 もう二度と彼女には会えない。だから、こんな気持ちを抱えていたって……。
「……でも」
 もう一度、君に触れたい。君を抱きしめたい。君に口付けをしたい。溢れる願いは叶わない。
 彼女の眠る石碑に背を向けた。闇夜でも目が利くのは彼女のおかげだ。もういない彼女は、今でも僕の中に強く深く刻み込まれている。二度と忘れることなどない。僕のこの少し冷たい体温も、時に死ぬほど愛おしくなるのは、それが彼女にもらったものだからだ。
「……ああ、今日はだめだなぁ」
 どこで隙間が空いたのだろう、心に風が入ってきて、胸が痛む。当たり前のように無視できていたことを、今日は何故だか見てしまう。隣にいない彼女の姿を見た気がして、一瞬身を震わせた自分に、笑いとも泣き声ともわからない声が出る。
「……会いたいよ、」
 この世で一番愛した人の名前が、静かに闇に飲まれていく。
 
【AGAIN3-0-0】畳む